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東京高等裁判所 平成3年(行ケ)127号 判決 1992年11月25日

富山市南央町37番6

原告

株式会社 源

代表者代表取締役

源浩

訴訟代理人弁理士

杉林信義

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 麻生渡

指定代理人

岡田萬里

土井清暢

長澤正夫

中村友之

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、昭和63年審判第5776号事件について、平成3年4月4日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和58年10月14日、名称を「ますのすし用保存容器」とする考案(以下「本願考案」という。)につき実用新案登録出願を行った(実用新案登録願昭58-159179号)が、昭和63年2月3日に拒絶査定を受けたので、同年4月1日、これに対する不服の審判の請求をした。

特許庁は、これを昭和63年審判第5776号事件として審理したうえ、平成3年4月4日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年5月22日、原告に送達された。

2  本願考案の要旨

別紙審決書写し記載のとおりである。

3  審決の理由

審決は、別紙審決書写し記載のとおり、本願考案は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である実開昭53-9396号公報(以下、「引用例1」という。)及び実公昭49-38485号公報(以下「引用例2」という。)各記載の考案に基づいて当業者が極めて容易に考案することができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により登録を受けることができない、と判断した。

第3  原告主張の審決取消事由

審決の理由中、本願考案の要旨の認定、引用例1・2の記載内容の認定及び本願発明と引用例1との一致点・相違点の認定は認める。また、相違点(1)についての判断はあえて争わない。相違点(2)ないし(4)についての判断は争う。ただし、容器の各部を接着剤により固定することが本願考案の出願前に慣用されている技術であること、箸をすし容器に添付することは本願考案の出願前にありふれた事項であることは認める。

審決は、相違点(2)ないし(4)の判断において、引用例1・2に開示された技術内容を誤解し、あるいは本願考案の作用効果を看過し、そのため本願考案と引用例1・2の考案との対比を誤り、本願考案は引用例1・2から極めて容易に考案をすることができるとの誤った判断を下したものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1(相違点(2)に関する認定、判断の誤り)

(1)  引用例2に示されているのは、発泡射出成形によって形成された受け台2と小突起3との間に底板4を嵌入装着しているものであり、嵌入装着と載置固定とは、いうまでもなく全く異なる技術概念であるから、本願考案の底蓋を突起上に接着剤により載置固定する技術が引用例2に記載されているとの認定は誤りであり、したがって、この誤った認定を前提とした審決の上記判断は誤りである。

(2)  また、本願考案の「外周輪郭体の端部より内側に折り曲げ突出形成した突起」の構成のうちの「内側に折り曲げ」の有する意味について、審決は何らの判断もしていない。

2  取消事由2(相違点(3)に関する判断の誤り)

本願考案における箸の使用目的には、食に供するという本来の目的のほか、この目的とは全く関係のない、すしを押すための強度を分担する構造材としての役割を果たすという目的が同時に含まれている。このように箸を本来の目的以外の全く別の押圧手段の一分担役として利用することは予測が極めて困難なことである。審決の「引用例1記載の考案の棒体を単に箸に設計変更しただけのもの」との判断は、この予測の困難性を無視し、何ら具体的理由を示すことなくされた誤った判断である。

3  取消事由3(相違点(4)に関する判断の誤り)

相違点(4)に係る本願考案の要点は、二本の弾性体が箸と足と上蓋とを介して具を押圧することであり、この点において本願考案と引用例1の考案とが一致するものであることは、審決の述べるとおりである。しかし、どうしてそのことから「本願考案は、二本の弾性体が掛け渡される箇所を引用例1記載の考案の上下に対向する棒体(箸)の突出端部間から、箸と底蓋間で且つ足と箸との直交部分隣接位置へ単に設計変更したものに過ぎない」といえるのか、審決は、その理由を何ら述べていない。審決は、この点において論理に飛躍があり、違法である。

4  取消事由4(本願考案の顕著な効果の看過)

審決は、前述のとおり本願考案の具体的構成の個々の特徴を無視したうえ、以下に述べる顕著な効果をも看過し、誤った判断に至ったものである。

(1)  相違点(1)に係る効果

長尺帯状部材を直角方向内側に折り曲げてその端部相互を重ね合わせることにより外周輪郭体が形成されるので、数枚の帯片を連結するものと異なって製造工程が簡便である。また、出来上がった外周輪郭体も、一箇所のみで連結が行われているので、製造時、運搬時、使用時等における連結部の剥離が防止でき、外周輪郭体をそのままの状態で維持することができる強度を得ることが可能である。

(2)  相違点(2)に係る効果

底蓋を外周輪郭体の突起上に接着剤により載置固定するだけでよいので、底蓋の底面側周縁部に接着剤を付けるか、あるいは突起上面に接着剤を付けるのみで極めて簡単に底蓋を固定することができる。また、接着剤が余分に付与されたとしても、その逃げ代として底蓋周端部と外周輪郭体との間隙があり、接着剤が完成した容器内に入り込むことがなく、具あるいは具を被覆するカバー体と接着剤とが接着するおそれがない。さらに、外周輪郭体あるいは底蓋の大きさに多少の誤差があっても、突起上で位置の調節ができるので、容易に底蓋を固定することが可能である。引用例1・2のものは、ともに底蓋が極めて外れやすく、不安定で取扱いに注意を要する。

(3)  相違点(3)に係る効果

箸を本来の使用手段である食に供する以外に、すしを押圧するための押圧手段としても使用するので、箸のほかに引用例1の考案のように別体の棒体を用意する必要がなく、極めて経済的である。

(4)  相違点(4)に係る効果

箸に掛け渡される弾性体の箇所が足の隣接位置であるため、弾性体による弾性力が極めて有効に足に直接伝達されることになり、足、上蓋及び具へと力が伝わる結果、具全体を効率的に押圧することが可能である。これに対し、引用例1の考案では、弾性体の位置が押桟から離れているため棒体がたわみ、その結果弾性体の有する力から棒体をたわませる力を差し引いた力しか押桟に加わらないことになる。

箸に掛け渡される弾性体の箇所が足の隣接位置であるため、弾性体の弾性力により箸にかかる曲げモーメントが弱いので、箸が折れることがなく、箸を有効に構造材として使用できる。

箸を容器の外方へ突出させる必要がないので、突出物がなくなり、持ち運びが容易でかつ持ち運ぶための容器や包装紙、風呂敷等に損傷を与える心配もなく、また、全体がコンパクトにできるので、包装紙の大きさを極力小さくすることが可能である。本願考案は、箸を容器の外方へ突出させないことをその要旨としているわけではないが、箸を容器の外方へ突出させないものをも包含するものであるから、上記効果は本願考案の効果として認められるべきである。

弾性体が容器の中央部寄りに掛け渡されているので、弾性体が簡単に外れることがない。

第4  被告の反論

審決の認定、判断は正当であり、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がない。

1  取消事由1について

(1)  審決は、その理由の記載から明らかなように、本願考案の採用した載置固定の技術そのものが引用例2に記載されていると認定したわけではなく、載置固定手段に差異があることを認定したうえ、これについて判断している。原告の取消事由1(1)の主張は、審決の読み違いに基づくものであって、理由がない。

(2)  同(2)の主張につき、本願考案の「内側に折り曲げ」の構成要件としての技術的意義は、底蓋を載置固定するための突起を、外周輪郭体の端部より内側に、断面形状が例えばL字状を呈するように、「折れ曲がった形状に」突出形成したことと解され、他方、引用例2の考案においても、その形状を見ると、底蓋(底板4)を載置するための突起(受け台2)は、外周輪郭体(成形品本体1)の端部より内側に、断面形状がL字状を呈するように、「折れ曲がった形状に」突出形成されているのであり、両考案は、外周輪郭体とその端部より内側に突出形成した突起の形状に関する点では相違しない。したがって、審決は、本願考案と引用例1の考案との相違点として、底蓋の外周輪郭体への取付けが、前者では、外周輪郭体の端部より内側に折り曲げ突出形成した突起上に接着剤により載置固定してなされるのに対し、後者では、分離可能に嵌合することによってなされることを取り上げ、これについて判断するに際し、「容器において底蓋を外周輪郭体の端部より内側に突出形成した突起上に載置固定することは、引用例2に記載されており」と述べ、内側に折り曲げ突出形成した突起の構成をも含めて判断しているのである。

2  取消事由2について

ある部材をその本来の目的のほかに他の目的のためにも使用することは、本願考案の出願前に万人が日常生活において頻繁に経験していることである。例えば、硬貨をねじ回しとして、印肉ケース又はスタンプ台等を文鎮として、歯ブラシを草木の葉の清掃ブラシ又は靴墨の塗り付けブラシとして、それぞれ使用することは、慣用手段であり、箸に限って見ても、例えば、箸を、液体(塗料、汁等)の攪拌用具として、あるいは、水飴の巻付け用具として、それぞれ使用することは、慣用手段である。そうだとすれば、すし容器を考案するに際し、それに添付されて至近に存在する箸を引用例1の考案の棒体に換えて採用することは、格別予測の困難なことではない。

3  取消事由3について

原告も認めているとおり、相違点(4)に係る本願考案の要点は、二本の弾性体が箸と足と上蓋とを介して具を押圧することであり、この点において本願考案と引用例1の考案とが一致するものであることを前提にする限り、相違点(4)についての審決の判断は当然のことを述べたにすぎない。したがって、審決がこの点にっき特にその理由を述べなかったことを問題にする余地はない。

4  取消事由4について

原告が本願考案の顕著な効果であると主張するものは、出願前慣用されるに至っていた技術の固有の効果(相違点(1)に係る効果)、引用例2の考案の固有の効果と慣用技術固有の効果との単なる総和(相違点(2)に係る効果)、当該技術の採用に伴うものとして容易に予測される効果(相違点(3)に係る効果)、力学上ありえない効果もしくは本願考案の要旨に基づかない効果(相違点(4)に係る効果)のいずれかであり、本願考案に進歩性を与えるほどに顕著なものではない。

第5  証拠

本件記録中の書証目録の記載を引用する(書証の成立は、いずれも当事者間に争いがない。)。

第6  当裁判所の判断

1  取消事由1について

(1)  引用例2に示されているのは、発泡射出成形によって形成された受け台2と小突起3との間に底板4を嵌入装着する技術であり、本願考案における底蓋を突起上に接着剤により載置固定する技術とは異なる技術であることは、原告主張のとおりであり、被告もこの点を認めている。

しかし、審決は、本願考案における上記技術そのものが引用例2に示されていると認定したわけではない。すなわち、審決は、引用例2の考案における技術と本願考案における技術とを対比して、容器において底蓋を外周輪郭体の端部より9内側に突出形成した突起上に載置固定するとの限度では一致するとしながらも、突起上に載置固定する方法については原告主張の相違があることをを認めたうえ、容器の各部を接着剤により固定することが本願考案の出願前から慣用されてきた技術である以上、引用例2の考案の嵌入装着を接着剤により固定することに設計変更がされることを前提に、本願考案は、引用例1の考案における底蓋を外周輪郭体に嵌合する構成を単に引用例2の考案における構成に改造したものにすぎない、と判断をしたのであり、このことは、当事者間に争いのない審決の理由の記載に照らして明らかである。

そして、引用例2の考案と本願考案のこの点に関する技術を比較したとき、審決認定の限度で一致することは明らかであり、また、容器の各部を接着剤により固定することが本願考案の出願前から慣用されてきた技術であることは当事者間に争いがないところであるから、この点についての審決の上記判断に誤りはない。

結局、原告の主張は、審決の趣旨を誤解したことに基づくものであり、採用できない。

(2)  本願考案の「外周輪郭体の端部より内側に折り曲げ突出形成した突起」の構成のうち「内側に折り曲げ」の有する意味につき、審決が特に明示して論じていないことは、原告主張のとおりである。

しかし、相違点(1)についての審決の判断において示されているとおり、長尺帯状部材を直角方向内側に折り曲げ、その端部相互を重ね合わせることによって外周輪郭体を形成することは、本願考案の出願前から種々の箱に広範に慣用されている技術であって、このことは原告もあえて争わないところであり、また、紙容器において、外周輪郭体の底縁を折り曲げ、底蓋との接着面積を確保するため、糊代を形成することは、従来より普通に行われている技術手段であることは当裁判所に顕著である。このことに照らすと、突起を形成するに当たり、外周輪郭体の端部を「内側に折り曲げ」る手段により形成する程度のことは、当業者が必要に応じて採用できる慣用手段であると認められ、このような慣用手段の有する意味につき特に明示して論ずる必要のないことは当然というべきである。したがって、審決が、上記の点につき特に明示して論ずることなく、相違点(2)について判断したことに何らの瑕疵もない。

2  取消事由2について

ある物を、その構成を何ら変更せずに、その本来の使用目的以外の目的のために使用することは、あえてその具体的な例を挙げるまでもなく、万人が日常の生活でしばしば経験するところであり、しかも、このような使用は、その使用の必要性が本来の目的に付随して生じた場合や本来の目的として使用する場所近くで生じた場合にしばしば見られることも経験上明らかなことである。そうすると、当事者間に争いのない事実である本願考案出願前からありふれたこととして行われてきた箸をすし容器に添付すること、また、箸は通常棒体であることに加え、当裁判所に顕著な事実である箸は食事の際などに物を挟み取るのに用いるという本来の目的から、力が加えられたとき簡単に折れたりたわんだりするというものであってはならず、その意味で一定の強さを有する棒体として知られていることに照らせば、引用例1の考案の押圧力を付与する手段である棒体に代えて箸を用いることに想到することに格別の困難性はなく、当業者が極めて容易に予測できる程度の設計変更と認めるのが相当である。

これと同旨の審決の判断に誤りはない。

3  取消事由3について

本願考案と引用例1の考案とが、二本の弾性体が箸(棒体)と足と上蓋とを介して具を押圧する点において一致するものであることは、原告も認めるところである。そして、一般に、種々の物を輪ゴムあるいは紐等で固定する場合にその輪ゴム等を掛け渡す箇所を、必要に応じて適宜選定することは、経験則上特段の工夫を要しないでできる程度のことである。これらのことを前提にすれば、審決が、相違点(4)に係る相違を単なる設計変更事項にすぎない旨判断したことは相当であり、そこに何らの論理の飛躍はない。

4  取消事由4について

原告が本願考案の顕著な効果であると主張すところは、その各構成の個別の効果についても、各構成を総合した本願考案全体の効果についても、本願考案に進歩性を与えるだけの顕著なものと認めることはできない。

すなわち、相違点(1)に関しては、本願考案の出願前から種々の箱に広範に慣用されている技術の固有の効果にすぎず、相違点(2)に関しては、引用例2の考案の固有の効果と慣用技術の接着剤の固有の効果との単なる総和にすぎないことは自明である。また、相違点(3)に関しても、食に供する箸が押圧体を兼ねることから当然生じる効果以上の意味を見出すことはできない。

次に、相違点(4)に係る効果についてであるが、前叙のとおり、一般に、種々の物を輪ゴム等で固定する場合に、輪ゴム等を掛け渡す箇所を必要に応じて適宜選定することは、経験則上特段の工夫を要しないでできる程度のことであり、この掛け渡す箇所を選定するに当たって、固定する物の種類、固定する目的、固定手段である輪ゴム等の外れにくさ等を考慮し、最適の箇所を選ぶことも日常の経験からして当たり前に行われていることである。このことからすると、仮に原告主張のように、箸に掛け渡される弾性体の位置が足の隣接位置か否かによって押圧する力に差が生ずるとすれば、これに適する箇所を選べば足りることであり、それが本願考案のすし用保存容器の形状からして足の隣接位置付近にあることは当業者であれば極めて容易に見出せることと認められる。また、足の隣接位置で箸に弾性体を掛け渡せば、箸にかかる曲げモーメントが弱くなり、箸が折れることが少なくなることも、容器の形状により弾性体を容器の端部寄りよりも中央寄りに掛け渡した方が弾性体が簡単には外れにくくなることも、日常の経験から自明の範囲を出ないことは明らかである。

原告が主張する箸を容器の外方へ突出させないことに伴う効果は本願考案の要旨外の構成に基づく効果であり、採用できない。

そして、本願考案の全体から生ずる効果が以上の各構成の持つ効果の総和にすぎないことは明らかであり、当業者が当然に予測できる以上のものと認めることはできない。

5  以上のとおり、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、その他、審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告の本訴請求を失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 山下和明 裁判官 三代川俊一郎)

昭和63年審判第5776号

審決

富山県富山市南央町37番6

請求人 株式会社源

埼玉県浦和市北浦和3-9-6

代理人弁理士 杉林信義

昭和58年実用新案登録願第159179号「ますのすし用保存容器」拒絶査定に対する審判事件(昭和60年5月14日出願公開、実開昭60-68065)について、次のとおり審決する。

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

理由

本願は、昭和58年10月14日の出願であつて、その考案の要旨は、昭和62年9月30日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載された

「長尺帯状部材を直角方向内側に折り曲げ形成し、その端部相互を重ね合わせることによつて形成した外局輪郭体7と、その外局輪郭体7の端部より内側に折り曲け空出形成した突起14上に接着剤により載置固定した底蓋8と、具9の上部に配置される足10付上蓋11と、該上蓋11の足10上にその足10とは直交方向に配置された箸12、及び箸12の脱落防止と上蓋11への押圧力を付与するために箸12と底蓋8間で且つ足10と箸12との直交部分隣接位置に掛け渡される二本の彈性体13とより成るますのすし用保存容器。」である。

これに対し、原査定の拒絶理由は、本願考案は、その出願前に日本国内において頒布された刑行物の実開昭53-9396号公報(以下「引用例1」という。)及び実公昭49-38485号公報(以下「引用例2」という。)各記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない旨のものである。

ところで、引用例1には、容器本体の胴壁内部に押桟付きの蓋体を嵌脱可能に嵌着し、容器本体の上下面にそれぞれ2本の棒体を平行に当接して各棒体の両端部を容器本体の外側に突出させ、上下に対向する棒体の突出端部間に各々輪ゴムを張架し、容器本体の 壁と底板とを別体に形成して両者を分離可能に嵌合すると共に、下部の棒体を底板と一体に固着したますの押ずし容器が、記載され、また、引用例2には、容器において底蓋を外周輪郭体の端部より内側に突出形成した突起上に載置固定することか、記載されている。

そこで、本願考案を引用例1記載の考案と比較すると、後者の「容器本体」、「蓋体」、「底板」、

「押桟」は、構造及び機能上、それぞれ前者の「外周輪郭体」、「上蓋」、「底蓋」、「足」に相当するから、両者は、外周輪郭体と、これに取付けた底蓋と、具の上部に配置される足付上蓋と、上蓋の足上にその足とは直交方向に配置された部材、及び部材の脱落防止と、上蓋への押圧力を付与するために部材に掛け渡される二本の弾性体とより成るますのすし用保存容器の構成の点で一致し、次の4点の構成で相違する。

(1) 外局輪郭体の形成が、前者は、長尺帯状部材を直角方向内側に折り曲げ、その端部相互を重ね合わせることによつて形成されるのに対し、後者は、定かでない点。

(2) 底蓋の外局輪郭体への取付が、前者は、外局輪郭体の端部より内側に折り曲け突出形成した突起上に接着剤により載置固定するのに対し、後者は、分離可能に嵌合する点。

(3) 上蓋の足上にその足とは直交方向に配置された部材が、前者は、 であるのに対し、後者は、棒体である点。

(4) 二本の弾性体が掛け渡される箇所が、前者は、箸と底蓋間で且つ足と箸との直交部分隣接位置であるのに対し、後者は、上下に対向する棒体の突出端部間である点。

これらの相違点を検討すると、まず、相違点(1)については、長尺帯状部材を直角方向内側に折り曲げ、その端部相互を重ね合わせることによつて外局輪郭体を形成することは、本願考案の出願前に種々の箱に広範に慣用されている技術であり、本願考案は、引用例1記載の考案の外局輪部体の形成に単に前記慣用技術を採用したものに過ぎないというべきである。

次に、相違点(2)については、容器において底蓋を外周輪郭体の端部より内側に突出形成した突起上に載置固定することは、引用例2に記載されており、本願考案は、引用例1記載の考案の底蓋を外局輪郭体へ分離可能に嵌合する構成を単に引用例2記載の考案の構成に改造したものに過ぎないというべきである。

もつとも、載置固定手段が、引用例2記載の考案は、嵌入であるのに対し、本願考案は、接着剤である点で相違するが、容器の各部を接着剤により固定することが、本願考案の出願前に慣用されている技術である以上、この点は、単なる設計変更に過ぎないというべきである。

続いて、相違点(3)については、箸をすし容器に添付することは、本願考案の出願前にありふれた事項であり、また、引用例1記載の考案の棒体が箸であることを排除する特段の理由がない以上、本願考案は、引用例1記載の考案の棒体を阜に箸に設計変更したものに過ぎないというべきである。

更に、相違点(4)については、要は、二本の弾性体が箸と足と上蓋とを介して具を押圧することであり、この点において本願考案と引用例1記載の考案とは一致するものであるから、本願考案は、二本の弾性体が掛け渡される箇所を引用例1記載の考案の上下に対向する棒体(箸)の突出端部間から、箸と底蓋間で且つ足と箸との直交部分隣接位置へ単に設計変更したものに過ぎないというべきである。

更に、相違点(1)ないし(4)における本願考案の構成の総合にも、格別の創意工夫を要しないものというべきである。

そして、本願考案は、引用例1及び引用例2各記載の考案の固有の効果の総和を越える顕著に卓越した効果を奏するものと認めることができない。

したがつて、本願は、原査定の拒絶理由により拒絶をすべきものである。

よつて、結論のとおり審決する。

平成3年4月4日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

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